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2PAC/ GREATEST HITS
(Death Row/Interscope/Amaru Records 1998/INTD2-90301)
- cd two -


Troublesome '96 -- 本作に初めて収められたこの楽曲は、「troublesome nigga/all you niggaz die」(俺は厄介者のニガー/お前等ニガーなんてみんな死んじまえ)という強烈なフレーズで始まる。その内容は、Makaveliのリーダー宣言とも受け取れ、自分が世界に君臨する王であるとの強い信念が伺える。disc2の幕開けに相応しい、Makaveliに生まれ変わった2Pacの凄まじい勢いを感じさせられるナンバーだ。


12歳にして従兄弟との子供を妊娠してしまった少女ブレンダを主人公とした社会性の強い作品。この曲でPacはストーリーテラーとしての才能を遺憾なく発揮している。ブレンダは子供をトイレの床の上で出産し、挙げ句の果てにゴミ箱に捨ててしまう。しかしPacはそんなブレンダを闇雲に批判するのではなく、その背景にあるゲットーの劣悪な生活環境を鋭い視点からえぐり出す。最終的にブレンダは家を追い出され、売春婦になり、ヤクも売るようになる。しかし彼女は一人のモデル・ケースに過ぎないのだ。視点を変えれば、ゲットーによって人生を狂わされた被害者とも言える。
Pacがこの曲で世間に伝えたかったこと。それは、ドラッグ・ディーラーや売春婦を批判する前に、ゲットーをなくせということなのだろう。Pacでなくては書くことができない名曲。20歳の作品「2Pacalypse Now」(1991)からシングル・カットされ、R&Bチャートでスマッシュ・ヒットを記録した。。
-- Brenda's Got A Baby


I Ain't Mad At Cha -- A Tribe Called Questに代表されるジャズ・ヒップホップの影響が見られる、Jazzyでハートウォーミングなナンバー。Danny Boyの中性的なヴォーカルが、Pacの様々に表情を変えるラップと絡み合って絶妙なハーモニーを醸し出している。この曲のビデオ・クリップでPacは路上で銃撃にあい、昇天してジミヘンやマイルス・デイヴィスといった過去の偉人達とジャム・セッションをしている。ビデオがPacの衝撃の死の直後に公開され、あまりにも現実とだぶるその内容に大きな反響が寄せられた。


哀愁漂うトラック & サグライフ語りという、Pac独自のスタイルを確立した記念すべき名曲。日本盤「R U still down ?」(1997)でライナーに寄稿もしている、Gangsta Rapに造詣の深いタカコスタ・ロドリゲス嬢などは、この曲をMost Favoriteに挙げている。Pacがかつて在籍したDigital Undergroundの面々が強力バックアップしており、彼らのファンにも堪らない一曲と言えよう。 -- I Get Around


Changes -- これまた未発表曲とは信じられないほどの名曲。Bruce Hornsby & The Rangeの"The Way It Is"(1986)という超特大ヒット曲のフック、及びBruceのピアノパートを引用した、HIP-HOPが苦手なポップス・ファンにも受けるであろうメロディアスなナンバーであり、本作のプロモ・シングルとしてスマッシュ・ヒットを記録した。この曲で2Pacファンになったという人も多く、また、既存の2Pacファンの間でも非常に人気が高い。
アメリカ国民全員が知っているといっても過言ではない"The Way It Is"を使用していることは、ともすれば大ネタ使いとの批判を受けかねない。こうしたことを鑑みて発表に至らなかったのであろうか。しかし、2Pacはヒットするために強烈なフックをチャートを眺めて引っぱり出してくるPuff Daddyとは対照的な存在だ。
"The Way It Is"はそもそも、86年当時、アメリカ全土を覆い尽くしていた不況の黒い陰をテーマにした楽曲であり、そのサビでは世の中こんなものだという諦めにも似た嘆きが歌われている。

 That's just the way it is
 Some things will never change
 That's just the way it is
 But don't you believe them

 これが世の中というもの
 決して変わらないものだってあるのさ
 これが世の中と言うもの
 なぁ そうじゃないかい?

この一節はdisc1に収められた"Life Goes On"に見られる、2Pacの人生観とも共通しており、彼がこの曲に惹かれたことは想像に難くない。しかし、2Pacの真骨頂はそのフックを次のようにオリジナルとまったく正反対に書き換えたところにある。

 That's just the way it is
 Things will never be the same
 That's just the way it is
 Oh yeah...

 世の中なんてこんなもの
 変わらないものなんて何一つない
 世の中なんてこんなもの
 そんなもんだよ

このフックを2Pacが歌っていないことは非常に重要だ。この曲で2Pacが言いたかったのはこの一節ではない。彼はひたすらこのヴァースとは正反対のこと、つまりBruce Hornsbyが歌ったことと同じ事になるのであるが、それを訴え続けているのである。曲がフェイド・アウトした最後の最後に2Pacは呟く。

 Some things will never change

 世の中には決して変わらないものもある

"Changes"(変化)という問題をこれほどまで真剣に追求した作品を私は知らないし、恐らくあったとしても、本楽曲以上の深みに至ることは不可能であろう。楽曲はキャッチーでも、そこにあるのは、変えたいという希望を抱きながらも、世間に阻まれなかなか変えることができないゲットーという現実なのである。Bruce Hornsbyは、「世の中には変わらないものがある」と言ったにとどまった。しかし、2Pacは「基本的には世界は絶え間なく変化していくものである」と主張する。しかし、「それと同時に変わらないものもある」と言うのが、彼が本当に言いたかったことである。

 We gatta make a change
 It's time for us as a people
 to startmaking some changes
 Let's change the way we eat
 Let's change the way we live
 And let's change the way we treat each other

 オレ達はこの状況を変えなくてはならない
 人間として変化の胎動を
 呼び覚まさねばならぬ時期に差し掛かっている
 食い物を手にする道筋を変えないか
 生き方ってのを変えてみないか
 人との付き合い方を変えようじゃないか

腹を据えて変えようとしなければ変わらないもの。それを変えようという強烈なメッセージを放っているのが、本楽曲である。ここにいるのは、Tupac Shakurという名の一人の立派な思想家である。


これぞG-Funkと言うべき超傑作パーティ・チューン。Joe Cocker "Woman To Woman"の全編を貫く印象的なブラス&キーボードをバックトラックに使い、このうえなくキャッチーな作品に仕上げられている。Joe Cockerの代表曲の一つとは言え、決して有名ではない"Woman To Woman"を取り上げたところにDreのセンスが光る。Billboard Top 100でNo.1を獲得し、2Pacにとっては最大のシングルヒットとなった。
この楽曲自体にそのヒットに見合うだけの斥求力があったことは言うまでもないが、映画『マッドマックス』を模した壮大なスケールのビデオクリップ(ハイプ・ウィリアムス監督)がそれにダメオシ的効果を与えた。当時最もスキャンダラスだった男の、これまたゴージャスなビデオ・クリップということで大きな反響を呼び、MTVでは連日狂ったようにオンエアされた。当時はまったく2Pacに興味がなかった私ですら、Dreと共に豪快なラップをかますPacの姿に目が釘付けとなった。このビデオ・クリップを初めて見たときに受けた強烈なインパクトは、今でも昨日のことのようにハッキリと覚えている。このビデオは、MTVが99年末に視聴者からの投票で決定した、20世紀のベストビデオセレクションで堂々9位にランクされたが、それも納得のいく結果だ。1位は言わずもがなのMichael Jackson "Thriller"だが、マイケルのこのビデオで幕を開けた映画仕立てのビデオ・クリップは、この"California Love"で一つの頂点に到達したと言っても過言ではない。この手法は今日では当たり前になり、"California Love"よりも華やかな作品も何作か作られている。しかし、それらは結局"California Love"の真似にしか過ぎない。そうした認識の元での9位という結果であろう。Pacの存命中にはディス合戦を繰り広げたJay-Zも近日のインタビューで"California Love"をfavorite videoに選び、「このビデオは既にクラシックであり、Hip Hopビデオの在り方を変えてしまった」と語っている。
ちなみにTOP10の顔ぶれは次の通り。

 1.Michael Jackson "Thriller" (1984)
 2.Madonna "Vogue" (1990)
 3.Nirvana "Smells Like Teen's Spirit" (1992)
 4.Peter Gabriel "Sledgehammer" (1986)
 5.Run DMC feat. Aerosmith "Walk This Way" (1986)
 6.Guns 'N Roses "Sweet Child O' Mine" (1988)
 7.Bestie Boys "Sabotage" (1994)
 8.Robert Palmer "Addicted To Love" (1986)
 9.2Pac feat. Dr.Dre "Califonia Love" (1996)
 10.Madonna "Express Yourself" (1989)
-- California Love (original version)


Picture Me Rollin' -- 冒頭の"criminal 4 u"で始まり、随所で笑い声を聞かせる少しおちゃらけムードの2Pac、Big Sykeのタメを効かせたラップ、Snoopとも似たフロウを持つCPO、そしてそれらに絡むDanny Boyの華麗な歌声と、4人の声のアンサンブルが絶妙なハーモニーを生み出している歌曲。しかし、2Pacが心底楽しんでいるように感じられないのは私だけであろうか。ここで歌われるのは悪事を働いて金を稼ぎ、それでベンツを転がすような優雅な暮らしを送る2Pac像であるが、彼はそのような物質的快楽だけで満足していないと思う。


2Pac作品で度々名前が現れる「ケイトウ」に捧げられてたナンバー。死の直前に完成していた遺作「Makaveli: The 7 day theory」(1996)でも「ケイトウ」の名が出てくる楽曲があることを考えると、彼の存在はPacにとって非常に大きかったと推測される。Pacが如何に仲間を大切にする人間であったかを証明する作品とも言えそうだ。そんな人物だからこそ、彼の死はいつまでも悼まれているのだろう。「How Long Will They Mourn Me?」との問いかけには、「Forever !!」と迷わず答えたい。
それにしても2PacはThug Life、或いはThe Outlawzのメンバーが絡むと俄然輝きを増す。これに続く"Toss It Up"のようにビッグ・ネームを呼んだ作品も勿論素晴らしいが、本当のダチとも言える彼らと演っているPacが一番リラックスしているように感じる。それに加えてWestsideの最終兵器、DPGのNate Doggが激シブの低音ヴォイスでフックを歌う。プロデュースはそのNate DoggとWarren G。
-- How Long Will They Mourn Me?


Toss It Up -- 今を時めくK-Ci & JoJo、そしてGuyのAaron HallというR&Bファンなら悶絶すること必至のMakaveli名義の作品。しかしゲストの豪華さとは対照的に、全体を覆うのは暗く物悲しいトーンである。同じくK-Ci & JoJoをフィーチャーした"How Do U Want It"と聞き比べると、2Pacの音世界とMakaveliのそれとの違いが鮮明に浮かび上がる。


過去のヒット曲の中で、母親に捧げられたものは少なくないが、その中でも特にアメリカの黒人コミュニティに愛されているのが、Spinnersの"Sadie"だ。このバラッド・クラシックをサビに、そしてヴァースではフュージョン界の草分け的存在、Joe Sampleの"In My Wildest Dreams"を使用した、"California Love"と双璧を成す2Pacの代表作が"Dear Mama"。Ray Parkerが爪弾く印象的なギターフレーズが全編で使用された、Tony Pizarroの手によるメロウなトラックと、Pacの哀愁漂う深みのあるラップ、及び"you're appreciated"の言葉に代表される心に染みいるリリックが見事に調和し、至高の芸術作品に昇華されている。今やアメリカでは母の日の定番曲として定着し、"Sadie"に変わるクラシックとなった。
この作品においてPacはリリシストとしての才能を遺憾なく発揮している。Rapのリリックは膨大な量に及ぶこと、また韻を踏むことなどが基本条件として存在するため、とかく支離滅裂になりがちである。しかし"Dear Mama"のリリックは一つたりとて無駄な言葉がない。まさに完全無欠、完璧なのである。
HIP-HOPはその成長過程において、過去の遺産を貪る「パクリ音楽」などとあらぬ批判にさらされてきたが、そのような堅物もこの曲を聴けば考えを改めざるを得ないだろう。なぜならこの楽曲にはHIP-HOPのクリエイティヴィティが隅々まで行き渡り、その無限の可能性を呈示しているからだ。また、Samplingがただの思いつきではないことを、これほどまで明確に伝えている楽曲はない。この曲のサビは同じテーマの元で書かれた"Sadie"でなければならなかったことは言うまでもなく、また母親の愛情への強い憧憬を振り切って荒野を一人突き進んだ2Pacの人生を象徴するものとして"In My Wildest Dreams:見果てぬ夢の中で"(邦題は「野性の夢」となっている)が使用されている。
-- Dear Mama


All About U -- オリジナルのSnoop Doggのパートが新人Top Doggに差し替えられた、Suge Knightの陰謀渦巻く問題の1曲。Snoop参加のヴァージョンは「All Eyez On Me」(1996)で聴くことができる。しかしながら、Snoop Doggのラップがいつものクオリティと照らし合わせると、あまり活きが良くないため、Top Doggの本ヴァージョンは興味深い。Top DoggのスタイルはSnoopのパクリ意外のなにものでもないが、オリジナリティはともかく、Snoopを模倣するだけあってスキルは充分なので、軽妙なライムを披露してくれる。音質もTop Doggヴァージョンの方がより鮮明で、Pacお得意の多重録音が冴え渡っている。印象的なフックはNate Doggが担当。


サンプリングクリアランスが取れなかったのか、クレジットには記されていないが、Princeの名曲"Do Me, Baby"を全編に敷き詰めたメロウなLA賛歌。Pacがoutroで

 LA, California Love part motherfuckin Two
 Without gay ass Dre

と言っていることからも明らかなように、"California Love"の続編である。
本楽曲はMakaveli名義での作品ながら、その作風は"Dear Mama"、"Life Goes On"と同一線上にあり、「メロディアスな2Pac」の最高傑作の一つである。一連の2Pac作品とは明らかにトーンが異なる「Makaveli: The 7 day theory」(1996)の中で唯一明るい雰囲気を漂わせ、異彩を放っていた。
ちなみにプロデューサーはQDIII。Jonny "J"と共に晩年の2Pacサウンドを支えたサウンド・クリエイターであり、Michael Jacksonで知られる大プロデューサーQuincy Jonesの息子。コーラスは、Nate DoggやDanny Boyらと並んでPacのお気に入りシンガーだったVal Youngが担当している。
-- To Live & Die In L.A.


Heartz Of Men -- 本作のラストを飾るのは"Heartz Of Men"。この作品でも"To Live And Die In L.A."に続いてPrinceの楽曲を引用している。Princeの最大ヒット作「Purple Rain」(1984) 収録の"Darling Nikki"であるが、男女の性愛を露骨に描写したメインパートではなく、次の楽曲の橋渡し的役割を果たしているパートをイントロに使用していることに注目したい。「Purple Rain」ではこのパートに次のような一節が付記されているから、2Pacはここで本楽曲を貫くテーマとして"Darling Nikki"を引用したとみられる。

 Sometimes the world's a storm
 One day soon the storm pass
 It all will be bright and peaceful
 No more tears or pain
 If u believe look 2 the dawn and
 fearlessl bathe in the...
 Puple Rain

 時に世界は嵐だ
 いつかもうすぐ嵐は過ぎ去るだろう
 そしてすべてが明るく平和になるだろう
 もう涙も痛みもない
 信じるのなら 夜明けを見るんだ
 そして 恐れずに
 紫の雨を浴びるんだ・・・

Pacは「To」を「2」、「You」を「U」で表記するなど、Princeファンであることをそこかしこで滲ませてきたが、未発表曲が異常な量で続発され、それが大ヒットを続けている現在の状況、また晩年はレコーディングマニアと化していたという談話などを耳にするにつけ、強迫観念的な異常さでもってワーカホリックに名作を発表し続けるPrinceの姿がだぶって見えなくもない。
disk1のラストに収められた"Hit 'Em Up"ではPacが作ったディス・ナンバーの最高傑作とも言うべき楽曲であるが、その響きはどこまでもネガティヴだ。これがもしラストに配置されていたら、少々物悲しい「Greatest Hits」になっていたであろう。しかし、本作は男としての心意気が鼻息荒くライムされるこの楽曲で幕を閉じる。一聴しただけではディスしているだけと誤解してしまいそうであるが、よくリリックを読めばPacが何を言わんとしたか分かる。泉山真奈美のように、物事の表層をすくい取ることだけに固執しているような人間には、その本質など見抜けるはずもないだろうが。


 以上のように、ほぼ完璧な選曲、曲順設定がなされた2Pacの「Greatest Hits」。2Pacが遺した膨大な楽曲の中から、全てのPacファンを納得させうるもの、また新たなPacファンが心惹かれるコンピレーションたりえるものとしての最大公約数的作品を作り上げた制作者には、称賛の声を惜しまずに送りたい。彼らが、楽曲の選定、配置の際に成したきめ細やかな配慮は本作の隅々から見て取れる。
 一方、こうした意図を全く汲み取れていない泉山真奈美という老年の女性はなんと精神の未発達な悲しい人間であろうか。彼女がライナーノーツで思いつくまま感情的に書き殴った戯れ言は「愚か」としか言いようがない。そして同時にその一言で済ますことができないのも事実。彼女が適当な暴言を吐いたり、事実無根の生存説を冗長するようなワイドショー精神丸出しの発言を繰り返すことによって、2Pacという偉大なアーティストが身を削って作り上げた珠玉の名曲の数々を汚した責任はあまりに重いと言える。また日本でそのようなライナーが、2Pacが我々に遺してくれた名曲の数々と共に出回っていることが私は残念でならない。この状況を打開すべく、次に日本盤が再発される機会があれば是非ともライナーノーツを改めて頂きたいものだ。
Kidoh Kashihara would like 2 thanx 2:
PPG "Paw Pads", D-WAN, G-HOUSE03


November 24, 1998 Released






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