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2Pac Interview "Ready To Live"
野郎は俺の腹に拳銃を突き付けていたんだ

これは「Me Against The World」発表直前に、拘置所内で得られた貴重な記録である。94年に狙撃された2パックが語る“疑惑の銃弾”の全貌。有罪判決を受けた婦女暴行事件の全容。ここにあるのはショウビズ界の暗黒面に弄ばれた、一人の男の赤裸々な告白だ。

(C) Kevin Powell/ 1995 Time Publishing Ventures Inc.
1995年1月の、ある寒い朝のこと、私はトゥパック・シャクールと話をするためにライカーズ・アイランドに向かっていた。昨年11月30日に狙撃されて以来、彼がジャーナリストと話すのはこれが初めてだ。いくつもの検問と金属探知器をくぐり抜けた後、私は陰気な白い会議室にたどり着いた。これと同じ建物に、トゥパックは3百万ドルの保釈金を積んでとどまっている。数週間のうちには、ニューヨークでの婦女暴行事件における性的虐待容疑で1年半から4年半の判決を受けることになるだろう。
 トゥパックは足を引きずるでもなく、さっそうと部屋に入ってきた。先の件では、足だけでなく他にもあちこち痛めているのだが。白いアディダスのトレーナーと、ダボダボのブルー・ジーンズといういでたちの彼は、これまでのどのインタビューよりも、どこで会った時よりも、警戒しているように見えた。話をしながら彼は私の目を見据え、次から次へとタバコを吸う。「ちょっと緊張してるんだ」。一瞬、彼はそう認めた。垣間見た死と、それに続いた怒濤のような噂といやがらせ。トゥパックは私を呼び寄せた理由をこう説明した。「これが俺の最後のインタビューだ。殺されるんであれば、みんなに洗いざらい知っておいてもらいたい。本当のところを知っておいてほしい」

●ここ数週間の経験を経て、今どんな気持ちですか。
「まず、刑務所での最初の2日は、俺ぐらい長くマリファナをやってた人間がそれを止めたらどうなるかっていうのを思い知らされた。気持ちとしては、自分が誰だかわからないような感じだった。部屋の中でじっとしてると、そこに2人の人間がいるような気がする。悪人と善人だ。あれが一番キツかった。お陰でマリファナはすっかり抜けた。あとは、毎日千回の腕立て伏せを自分に課すことにした。1日に何冊も本を読むし、書き物もしている。気持ちが落ち着くんだ。そのうち、自分のおかれている状況や、どうしてこういうことになったのかわかってきた。訴えられている罪に関しては俺はシロだが、ああいう振る舞いをしていたことについてはシロとはいえない」
●どういうことか、詳しく話してもらえますか。
「何かやらかすのと同じくらい、何もしないのもまた罪だということ。今回の件について言ってるんじゃない。俺の生き方の問題だ。やらなきゃいけない仕事があっても顔を出さないのが俺だった。責任の重さにビビッて、逃げてばかりいたんだ。だが、今にして思えば、仕事に出掛けないのは、悪の力のなせる技だったことがわかる。悪の力は100%やってくる。100%純粋な気持ちでいなかったら、こっちの負けだ。俺が今、負けつつあるのもそのせいだ。
 俺がここに入った時、囚人どもは『くたばれ、ギャングスタ・ラッパー』と声をそろえた。俺はギャングスタ・ラッパーじゃない。自分の身に起こったことをラップしてるだけだ。俺は5発も撃たれたんだ。俺を殺そうとしたやつがいる。本当にそれが現実だった。俺は自分が特別だとは思わない。ただ、そこらのやつより責任は重いと思う。みんな、俺が代わりに何かやってくれるのを期待している。答を出してくれるのを。だが、俺に答は出せなかった。マリファナの吸い過ぎで、脳ミソが半分死んじまってたからだ。ホテルの部屋でもタバコと酒をやりまくって、クラブに出掛けても意識が朦朧としてるだけ。あれじゃ、ムショに入ってるのと同じだ。ストリートで俺が幸せだったためしはない。俺が幸せそうだったなんて言えるやつは、どこにもいない」

●1年前にお話した時は、刑務所に入るようなことがあったら、あなたのスピリットは死んでしまうと言っていましたが、こうして聞いていると今はその逆のようですね。
「あれは中毒患者の物言いだ。中毒患者というやつは、刑務所に入ったら生きていけないと思ってる。トゥパックの中にいた中毒患者は死んだ。トゥパックの中の言い訳がましいやつも死んだ。恨みがましいトゥパックも死んだ。不名誉な出来事を起こるがままにさせておいたトゥパックも死んだ。神は、何か尋常でないことをやらせるために俺を生かしておいたんだ。だから俺はそれをやらなければならない。極刑を課せられたとしても、それもやっぱり俺の仕事だ」
●タイムズ・スクエアのクアド・レコーディング・スタジオでの夜の話をしてくれますか。
「あの撃たれた晩かい?いいとも。ロン・GってニューヨークのDJが『パック、俺んちに来て、俺のテープにラップを入れてくんないかな』って言ってきたんで、『いいよ。タダでやってやるよ』ってことで、俺はあいつのウチへ行った。俺と、ストレッチと、他に何人か地元の仲間が一緒だった。その曲が終わったところで、俺はブッカーというやつから呼び出された。リトル・ショーンのレコードでラップしてくれって話だった。こいつは有料だ、と俺は思った。俺を利用してるだけなのが見え見えだったからだ。だから言ってやったんだ『わかった。7千ドルくれたらやってやる』って。そしたら、あいつ『金ならあるから来い』って言うじゃないか。俺が途中でマリファナを手に入れるのに寄り道していたら、あいつ、また呼び出しをかけてきやがった。『どこにいる? なんで来ない?』こっちは『今、行くから待ってろよ』と」
●あなたは、その男を知っていたんですか。
「俺の知り合いの、危ない連中を通じて会ったことがある。認められたくてがんばってるようだったから、俺としては好意であいつを助けてやるつもりだった。なのに、行く先を聞こうと思って改めて電話したら『俺にはそんな金は無い』と言い出した。俺が『金が無いんなら、俺は行かない』と言ったら、あいつはいったん電話を切って、それからまた電話してきた。『アンドレ・ハレル(当時のアップタウン・エンタテイメント社長)に電話して必ず金は払ってもらうが、とりあえず俺が自腹を切る』という話だった。だから、俺も『わかった。だったら行くよ』と答えた。そして、その建物に向かって歩いていく途中、上のスタジオから誰かが大声で呼びかけた。リトル・シーザー(ジュニア・マフィア)だった。ビギー(ノトーリアスB.I.G.)のサイドマンで、俺のホームボーイだ。やつの姿を見たとたん、俺の心配は吹き飛んだ」
●つまり、あなたは・・・。
「俺はナーヴァスになっていたんだ。ブッカーってやつは、俺の天敵だったやつと知り合いだ。警察には言いたくなかったが、世間には教えてもかまわないだろう。ブッカーと俺を引き合わせたのはナイジェルだ。俺が金に困っていたことは、周知の事実だった。ショウはどんどんキャンセルされていたし、レコードの売上はまとめて弁護士の懐に流れていたし、映画の金は全部俺の家族に入っていた。だから俺はそうやって、人のところでラップして金をもらっていたんだ」
●そのナイジェルという人は?
「ニューヨークで『Above The Rim』を撮ってる間中、俺がツルんでた仲間だ。あっちから寄ってきたんだ。『俺が面倒見てやる。もうトラブルに巻き込まれることはない』と言って」
●ナイジェルはトレヴァーという名前でも通っていませんでしたか。
「ああ。トレヴァーって人は他に実在したんだが、ナイジェルはどっちも偽名だったってわけだ。俺はあいつとツルんでた。あいつの仲間とも親しくなった。バギー・パンツにスニーカーという格好の時期もあったくらいだ。あいつらが俺を買い物に連れ出して、そこで俺はロレックスや宝石やらを買い込んだ。あいつらが俺を大人にしたんだ。ブルックリンのギャング連中にも紹介された。ナイジェルの家族にも会ったし、あいつの子供の誕生パーティーにも出た。俺はあいつを信用していたんだ。ナイジェルを映画に出そうとまでしたんだが、あいつは映画に出たがらなかった。俺にはそれが引っ掛かった。映画に出たがらないニガなんて、俺は知らない」
●狙撃の話に戻ってもらえますか。あの晩、誰があなたと一緒だったんですか。
「俺のホームボーイのストレッチと、やつの仲間のフレッド。それから俺の妹の彼氏のZaydが一緒だった。ボディガードじゃない。俺にはボディガードなんていない。俺たちがスタジオに到着すると、表に迷彩色の作業着を着て帽子を目深にかぶった男が立っていた。俺たちがドアの方に歩いていっても、そいつは顔を上げなかった。ジェラシーにしろリスペクトにしろ、いずれにせよ俺を見て気が付かない黒人とは、俺はお目にかかったことがない。だが、その男は俺の顔を見ると、また顔を伏せてしまった。俺もハッパをやったばかりだったから、気にもならなかった。ロビーで自分の身に何かが起こるなんて、思いもしなかった。ブザーを鳴らしてドアが開くのを待っていると、テーブルに向かって新聞を読む男の姿が目に入った。そいつもやっぱり顔を上げなかった」
●いずれも黒人男性だったんですか。
「どっちも30代の黒人の男だ。だから最初、俺はそいつらがビギーのセキュリティに違いないと思った。迷彩色の作業着を見れば、ブルックリンの出身なのはわかったからだ。だが、そこで俺は思ったんだ。ちょっと待てよ、ビギーの仲間だって俺を気に入ってくれてんのに、なんだってこいつらは顔も上げねぇんだ? 俺はエレヴェーターのボタンを押して振り返った。その時だ、連中が拳銃を手に飛び出してきたのは。2つとも、揃いの9ミリ口径だった。『動くな。全員、床に伏せろ。わかってるよな。持ってるものを全部出せ』。どうすりゃいいんだって感じだった。
 俺はストレッチが食ってかかるだろうと思ってた。あいつは、連中よりずっとデカかったからだ。犯罪原理について俺の知るところでは、強盗は図体のデカイやつにまず襲いかかるらしい。だが、あいつらはストレッチにかまいもせず、まっすぐ俺に向かってきた。みんな死んだように床に伏せてたが、俺は固まっちまってた。肝っ玉のあるところを見せてやろうとか、そんなんじゃ全然ない。ただ、床に伏せることもできなかったんだ。連中は俺につかみかかって拳銃を持っていないか調べると、『金目のものを出せ』と言った。でも俺は出そうとしなかった。肌の色の明るい方のやつ――表に立ってた方のやつが俺にのしかかった。ストレッチは床に転がって、新聞を読んでた方があいつに拳銃を突き付けていた。そして茶色いのに向かって『そんなチンピラ、撃っちまえ! かまやしねえよ!』と言った。そこへきて俺はビビッた。野郎は俺の腹に拳銃を突き付けていたんだ。チビるんじゃないかと、そればっかり考えていた。俺はそいつを抱え込んで、拳銃を体からそらそうとした。拳銃がひん曲がった状態で、やつは引き金を引いた。俺が最初に撃たれたのは、その時だった。俺は足だと思った。タマに当たったとは思わなかった。
 俺は床に崩れた。頭の中は、パックよ、死んだフリをするんだ、という声で一杯になった。やつらは俺に殴る蹴るの暴行を始めた。俺は『撃たないでくれ!』とは一言も言わなかった。死んだようにおとなしくしていた。俺が床に転がってるうちに、やつらは俺から金目のものを奪い取った。俺は目をつぶっていたが、震えがとまらなかった。あんなことになったら、震えもする。そのうち、後頭部に何か感じた。うんと強烈なやつだ。やつらが俺の頭を蹴るかピストルで殴るかして、コンクリートに叩きつけているんだろうと思った。目の前が白くなった。真っ白だった。何も聞こえなくなった。何も感じなくなった。それで思ったんだ、気を失ったんだなって。でも、気を失ってなんかいなかった。感覚も戻ってきたし、耳も聞こえてきた。目も見えてきた。やつらが俺の意識を回復させたんだ。そうしておいて、また殴る蹴るを繰り返し、俺はまた耳が聞こえなくなった。目も見えなくなって、真っ白になった。そこでまた一発殴られて、聴覚も視覚も戻ってきて、また意識が回復したことに気づいた」

●名前は言っていましたか。
「いや。だが、やつらは俺を知っていた。そうでなかったら、俺が拳銃を持ってるかどうか調べたりしないだろう。まるで俺に腹を立ててるみたいだった。やつらが俺ばかり蹴ったり踏み付けたりするのは感じていた。他の誰も撃たれていない。『エイッ、このクソッたれ、どうだ、これでもか』ってな具合で、思い切り蹴りを入れていたんだ。俺は気を失いそうになって、頭の中には血も何も通ってないような気分だった。ひとつわかっていたのは、胃が強烈に痛んだということ。妹の彼氏が俺を上向きに引っ繰り返して『おい、大丈夫か?』と言った時は、『ああ。撃たれちまった。撃たれちまったよ』と。フレッドも撃たれたと言ってたが、それは俺の足を貫通した弾だったんだ。
 俺は立ち上がってドアの方へ歩いていった。ドアまでたどり着くと、そこにパトカーが停まってたんで俺は気が動転しちまった。『パトカーかよ。俺はまだ、スタジオに顔も出してないんだぜ』と。そこで俺たちはエレヴェーターに飛び乗って、上へ行ったんだ。俺は足をひきずったりなんかしていたが、何も感じなかった。マヒしちまってたんだ。上へ上がって、グルリと見回して、俺は死ぬほどビビッた」

●なぜ?
「そこにはアンドレ・ハレル、パフィ(ショーン“パフィ”コムズ)、ビギー・・・と、40人だかのニガがいたんだ。みんな金目のものを身につけて、だ。しかも俺なんかより、ずっとたくさん。ブッカーに目をやると、あいつは俺を見てビックリしたような顔をした。なんでだ?ついさっきブザーを押して、上へ行くって伝えたばかりじゃないか。
 リトル・ショーンは泣き出した。なんでリトル・ショーンが泣くんだよ、撃たれたのは俺だぜ、と思った。あいつはメチャメチャに泣いて『どうしよう、パック、あんた、座らなきゃダメだ』とか言ってたが、俺は、なんでこいつら俺を座らせたがるんだ?ってな感じだった」

●なんでって、5発の銃弾があなたの体を通過していたからですよ。
「頭を撃たれていることはまだ知らなかった。何も感じなかったんだ。ズボンの前を開けてみたら、カール・カナイのパンツに火薬が着いていて、穴があいているのがわかった。タマが無事かどうか、パンツを降ろして確かめる気にはなれなかった。穴があいてるのを見るなり『クソ〜ッ、ちょっとハッパをくれないか』と言うと、女に電話して『おい、撃たれちまったよ。オフクロに電話して言っといてくんないか』って伝えたんだ。
 誰も俺に近寄ってこなかった。気が付けば、誰も俺を見ようとしない。アンドレ・ハレルも俺を見ようとしない。それまでの5日間というもの、俺はあいつと一緒に夕飯を食いに出掛けてたっていうのに。あいつは俺を『ニューヨーク・アンダーカヴァー』に招待して、仕事をくれると言ってたんだ。パフィも後ろの方に立ってた。あいつが出てくるより先に俺がビギーのためにどんだけのことをやってやったか、あいつだってよく知ってるくせに」

●つまり、みんああなたが出血しているのを見たわけですね。
「そのうちみんなが言いだした。『おまえ、その頭!頭から血が出てるぞ』って。でも俺は、ピストルで殴られただけだと思っていた。そのうち救急車とサツがやって来た。顔を上げて最初に目に入ったサツは、例の強姦容疑で俺の向こうに回ったやつだった。やつの顔は半分ニヤケていた。みんなが俺の股間を見つめてるのに気づいたらしい。『どうだい、パック、調子は?』ときた。
 ベルヴュー病院に着くと、医者が『なんてこった!』と言うから、俺も『何だ?どうした?』と思ったが、その医者が他の医者に話しているのを聞いていたら『見ろよ。こんなところに火薬が着いてるぞ』と、俺の頭を指して言っていたんだ。『ここが弾の入った跡で、こっちが出た跡だ』医者がそう言って指さすと、俺にもその穴が感じ取れた。だから言ってやったんだ。『うへ〜っ、俺にもわかるよ』って。その辺から俺が気が遠くなってきた。『チクショ〜、あいつら頭を撃ちやがった』と言うと、医者に『自分がどんなにラッキーかわかってないな。あんたは5発も撃たれてるんだよ』と言われた。おあれは妙な気分だった。信じたくなかった。最初の1発しか思い出せない。あとは全部、真っ白になっちまったから」

●死ぬんじゃないかと思ったことは?
「ない。神に誓って言う。気味の悪いことを言うつもりでも何でもないが、あの連中が拳銃を取り出した瞬間から、神様が守ってくれてるのを俺は感じていたんだ。唯一、俺を傷つけたのは、ストレッチや他の連中が、そろって床に伏せちまったこと。銃弾は痛くなかった。回復に向かうようになるまで、痛みは全くなかった。歩けない、起き上がれない、手もバカになっちまった。ニュースを見れば、俺のことでウソばかり並べてやがった」
●あなたの気に障った報道について、いくつか話してください。
「一番気に障ったのは、あれは俺の狂言だったと書いた男だ。俺の仕組んだことで、全て演技だったという、あれ。あれを読んだ時、俺は赤ん坊みたいに、女みたいに泣き出すしかなかった。信じらんなかった。気持ちがボロボロになった。
 それにニュースでは、俺が拳銃を持っていたとか、マリファナを持っていたとかいう話にしたがっていた。俺は被害者じゃない、俺が自分でやらかしたんだ、とでもいうように」

●睾丸をひとつ失ったというジョークについては、どうですか。
「あれはそんなに気にならなかった。俺のタマは、そこらのニガよりでっかいんだって、最後に一発、笑わしてもらったようなもんだ。医者も『子供は作れますよ』って言ってた。初日の夜に検査手術を受けた後、そう言われたんだ。『大丈夫。弾は皮膚から抜けて、皮膚から出ている』と。頭も同じこと。皮膚から皮膚へ抜けている」
●以後、かなり痛みますか。
「ああ、頭痛がする。自分の叫び声で目を覚ますんだ。まだ撃たれてるような、悪い夢ばかりみる。あの連中が拳銃を取り出して、『そんなやつ、撃っちまえ!』という声ばかりがする。それで汗だくになって目を覚まして、そして思うんだ、クソッ、また頭痛だ、って。あの病院の精神病の医者が、それは精神的ショックの後遺症からくるストレスだと言っていた」
●どうしてベルヴュー病院を離れたんですか。
「ベルヴューは次の日の夜に退院した。力にはなってくれたが、実験台にされているような気分だったんだ。みんな、しょっ中顔を出しては俺のタマを調べてく。あんまり居心地のいい状況じゃなかった。俺は自分の命が危険にさらされていることを知っていた。あそこにはフルーツ・オブ・イスラムが入り込んでいたんだ。だが、あいつらは拳銃を持ってない。俺は相手のニガがどんなやつか、ちゃんとわかってるんだ。だから俺はベルヴューを出て、メトロポリタンに移った。向こうでは電話を用意してくれて『ここなら安全です。あなたがここにいることは誰も知りません』という話だった。でも、電話が鳴れば『まだ死んでなかったのか?』とくる。ああいう連中は情け容赦がない。だから俺は自分から退院を申し出て、家族が安全な場所へ連れてってくれた。ニューヨーク・シティにいる、俺のことを本気で心配してくれる人のところへ」
●どうして撃たれた翌朝に出廷したんですか。
「連中は病室まで『パック、おまえは出廷しなくていいよ』と言いにきたんだが、俺としては、姿を見せないと裁判官は俺が芝居してんじゃないかとか、くだらないことを考えそうな気がしたんだ。あいつら、情報から隔離されてるから、俺が撃たれたことも知らなかったんだ。俺は何が何でも出廷しなきゃならないと思った。神に誓って言うが、同情を引こうなんてことは、これっぽちも頭になかった。俺に考えられたことはひとつだけ。この病院で命をかけて闘ったように、今度は自分の人生のために闘うんだ、ということだけだった。
 俺は車椅子で出廷した。裁判官は俺の目を見ようとしなかった。裁判の間中、あいつは一度も俺の目を見なかった。やがて陪審員が入場した。みんな、いつものことだという素振りだった。俺は自分が生きてることが奇跡に思えていた。そして、これからこいつらがやるべきことをやってくれるんだろうと思った途端、俺は気が遠くなるのを感じて、退場させてくれと言ったんだ。
 裁判所を出ると、カメラがいっせいに俺に向かってきて、足やら何やらにぶつかった。『てめえら、ハゲタカみてえな連中だな』って言ってやった。人間の心の、一番醜い部分を見てしまったような気持ちだった。俺が車椅子を押されながらあんな顔をしていたのは、そのせいだ。俺を信じてくれている人達のためにも、ずっと顔を上げていようと自分に誓っていたんだが、お陰で意気が萎えてしまった」

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